去年の暮、ある日僕は夢を見た。あの夢は、今でも忘れない。 ここからは、その夢が気になってしまい、その時メモした文面のコピーだ。 「夢の中ではあるが、僕はクライミングをしている、と言うことを意識している。夢の中でその岩を登るのは、僕が初登攀と思われた。ボルダーにしては大きすぎ、ラインと言うには短めの、10m程の岩だった。通常のクラックラインとは違い、謙虚な横の層のクラックだった。そのクラックに、僕は夢の中で所々NPをセットしていた。 夢の中で、ビレイヤーはU2だった。以外と難しくはないと感じている。多分11N程なのではないだろうか?岩場を綺麗にし、立木を終了点にして、首尾よくRPしていた。 夢の中で僕はU2と相談していた。 『これって本当に初登攀なのだろうか』と云う不思議な疑問が頭に浮かんだからであった。冷静に考えると、こんな山の中の小さめの岩場に好きこのんで、登りに来る人間なんていないだろし、益してチャートをNPで、登る人間なんて、居ないだろう。又、居たとしても、かなり限られてくる。だから初登攀の可能性は大きいだろう。 しかし、この魅力的なラインを放って置くのはおかしいし、これぐらいのラインであれば、ある程度の実力がある人なら、朝飯前だろう。 もし、初登攀でなくても僕らは一向に気にとめないが、ここでライン名を付けグレーディングし、友人にのみ発表したところで、本当の初登者が現れた時は、まさに滑稽だ。 逆に数年後、誰かが同じように初登攀したと思い発表した時は、僕らはどう感じるだろう。そんなことを話していた。 そこで僕の夢は、そのまま近未来に飛び、同じ場所に立っていた。 僕らの周りの景色は、そんなに変わりはしないが、街燈があったり、ベンチがあったり、ランニングをしたりしている人がいたりして、なんだか公園の様な様子になっていた。 僕らがロープを結び、ハーネスをつけ登っていたラインを、多くの若者がアスレチックでもするかの様に、アンダーウェアーにスポーティーなシャツやパンツなどでフリーソロしていた。 その同じ場所に立ち、僕らは未来の若者と会話をしていた。『未来じゃこんなに人気の場所になってんだ!実は僕らが初登したんだよ!』といったら、『初登って何?』という答えが返ってきた。『もしかして、ここは大昔アルプスの頂上だったの』と聞かれた。」 朝起きてから、夢を明確に覚えていたのはここまでだったが、いろいろ考えてしまい、起きた後も妄想してしまった。近未来人類におけるクライミング技術が発達し、万人が5.12で15m前後までなら階段を登るように登っていたら(そんなことは在りえないだろうが)、初登攀やライン名とは何の意味があるのだろう? 彼らに取っては、階段なのだから、初登攀者がいて、グレードがあっても、全く無意味なのでは無いだろうか? ましてや、ボルトの意味とは、何なのか?まるで洗濯板みたいだと思ってしまった。 僕のメモは、まだまだ続いていたが、アップするのはここまでにしておこうと思う。 実は、まさにその時見た夢の舞台は、ここ底areaだった。 今日、そのエリアで目標ラインはRPする事は出来、正夢になったと同時に、ライン名を考えている自分に大きな矛盾を感じていた。この気持ちはどう整理すべきか、考えてしまう。 また、ビレイヤーはF田くんだった。F田君にはとても感謝しているし、U2はムビーを撮っていてくれた。「ありがとう」。 全てが、正夢と一緒では無い事に感謝しつつも、この心に一度発生してしまった矛盾は、そう簡単には無くなりそうもないように感じている。 取りあえず、気になったラインがRP出来たことだけは、素直に喜びたい。 Content-Disposition: form-data; name="image"
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