今までとは全く違った、充実感を味わった一日だった。  今日、僕が強く感じた事は、「神の存在?」とまさに攀じると云った事の「原始的思考」だろう。   この20年、暇さえあれば攀じってきた気がするが、それでもNP未踏というのは、全く今までとは違う気がした。   岩は美しく見えてもそれなりであり、プロテクションのセット(訊き)もそれに類似した程度だった。美しい未踏の壁とはこういったものか、と思わせるものだった。   テラスには、染み出した雨だれの箇所だけ誇りはなく、薄く積った砂埃は、固く締まって、擦っても岩肌はなかなかあらわにならない。しっかりした層のクラックには、土が詰まっている。   湿度が上がると、一気にグレーが濃くなり、岩肌の表面に湿気をおび、水滴が溜まりはじめる。   「大海への脱出」といった感じの5.8程度(だと思われるが)のラインで、緊張が走る。全てが横向きに近いクラックで、訊きを何度も確認しての登攀だった。   全く「鳥とクライマーの世界」とは、かけ離れ「蝙蝠とクライマー」といった感じだった。   僕は、角岩(チャート)でのNPも初めてだったので、先輩とともに、TRとPPを繰り返した。最初の一本だけは、RPしたと言ってもいいのかな?怪しいところだが。   このエリアには、今のところ美しいNPラインが、4本はとれそうだ。   そして、今日最後にトライしたラインは、被りが強く「マリオネット」の様だった。これには驚いた。最近「マリオネット」を登ってみたいと真剣に考えていたのだが、季節的に厳しくなっていたので、半分諦めていたのだ。   こういった形で新たなラインと出会ってしまうと、神様が見守っている様で、楽しくなる。U2も喜ぶに違いない。   U2とK先輩とでゆっくりぶら下りながら、初登攀ごっこが出来そうだ。楽しい思い出になりそうな気がする。   たびたびこういったラインを見つけると、「山のあなたの空遠く幸い住むと人のいう…」という詩や「Surf is where you find it」といった言葉を思い出す。   全く素晴らしい。 
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