計画では、アイス&トラッド、とても楽しそうなトリップとなりそうだった。 朝6時半にU2が迎えに来てくれた。途中、林道は凍てついていたため、徒歩となったが、9時半頃にはゲレンデ周辺にいただろうか?それからお互い2〜3本ほどアイスを登り、昼食休憩となった。 僕は何故か、昼食を買い忘れ、U2にパンを分けてもらった。 嘗ての憧れの場所だけに、氷のカーテンが前の晩から頭の中でグルグル回り、舞いあがっていたのかもしれない。 その美しいカーテンは、かつて登ったことがないほどハングしていた。僕の常識では、重力に従って落ちる水が凍るのに、ハングはあり得ないのだが、ここはルーフに近い、巨大な氷柱となり発達している。 バイルを打ちこむと、巨大な木管楽器の様に低い音で、短く響く。心まで痺れる感じだ。アイゼンで必死にスタンスを求めると、ペットボトル大でバラバラと落氷する。 たかが17〜18m程だと思われるが、そのバーティカルアイスを上まで揚ると、前腕はパンプしていた。 山屋的正しい疲れ方と言った感じである。 憧れていた、エリアにやっと踏み入れ、クタクタになるまで体を動かしつくした。 夕方になり、帰路につくかと思い気や、僕らは何の迷いも無く、時間のみを確認し、自然とそのままの格好で岩場へと向かった。 ゴルジュの合間にあるアイスゲレンデと違い、岩場は日当たりがよく、夕方15時を回ってもまだ暖かだった。 取りあえず、暖かいところを目指し、体を休めようと思い、岩の下に来ただけだったが、岩を見てしまうと、日が高いし、「取り合えず登るか」といった具合になる。 特に相談するわけでもなく、「じゃあ数本登って帰るか」と言った具合に会話が出て、オブザベをしながら準備に入る。 凍ったロープを結び、かじかんだ足を山靴からクライミングシューズに履き換え、バイルをおろし、チョークバックを付け、肩から下がるのは、スクリューからカムへと交換される。 なんだか、行きたい時に、行きたい場所へ行く仲間がいて、登りたい所を、どんどん登っていく様に錯覚してしまうほど楽い。…すこし自由に成れてきた様な気がして、やっとクライミングが体に沁み込んできたかもしれない。…と云うような、嬉しさが込み上げてきた。 あとあと考えると、こんなことが出来るのも、なんて素晴らしい、クライミングバムパートナーが居てくれたかと感心してしまう。 時間的に、「サイコキネシス」と「コークスクリュー」の2本しか登攀できなかったが、基本的に氷の準備をしていたため、カム類の数は少なく、ランナウト、ズラシなどで対応せざるえない状態だったため、かなり充実し、忘れがたい思い出となった。The mind is free.といった事を感じたのは、多分U2も同じだろう。 最後は二人とも、クタクタで、充実を実感しながら、帰路に就くことが出来た。 |